カルティエのアートギャラリー

パリは最近雨続き。

雨のせいか寒さは和らいで2月らしくない。

天気悪い週末はだいたい美術館やギャラリーへ行ってる私たち。先週末はファンデーション・カルティエ(Fondation Cartier)に行きました。

 

見に行った展示は、クラウディア・アンドゥハル(Claudia Andujar)の写真展。

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外は雨降りで入り口ではそんなに並ばず入れたけど、日曜日だったので中は結構人が多かった。

 

クラウディア・アンドゥハルについて

1931年スイス生まれのブラジル人写真家。

彼女の父親はハンガリー系ユダヤ人で、彼女もルーマニアやハンガリーで幼少期を過ごす。第二次世界大戦中は母親とオーストリアへ疎開。父親と父方の家族はナチスによるユダヤ人大量虐殺の被害者である。

終戦後、彼女はニューヨークへ人文学を学びに留学。そしてスペイン系移民のフリオ・アンドゥハルと出会い20歳で結婚する。その後すぐに別れるも、彼の苗字アンドゥハルを名乗り続けている。

写真家として働き出した彼女は、ある日ブラジルでの仕事がきっかけで南米の先住民族「ヤノマニ族」に出会う。現代社会と接触せずに暮らす「ヤノマニ族」に魅了された彼女は、彼らの生活に密着し撮影、いくつかの写真集を出版している。彼女は写真を通してヤノマニ族の存在を知らしめ、彼らに敬意を払うよう促している。彼らの生活を邪魔しないように、彼らを守るために。

 

ヤノマニ族とは?

ブラジルとベネズエラの国境付近に住む先住民族で、アマゾンの大自然の中で伝統的な生活を送っている。彼らはキャッサバや狩りで得た肉や魚などを食し、茅葺の家で生活しハンモックで寝る。彼らの見た目は顔や体にペイント・刺青をしたり口元に長い棒状のピアスをしている。暑いアマゾンに住んでいるため、ほぼ裸に近い格好をしている。

1970年代始め頃、ブラジルの軍事独裁政権によるアマゾンでの交通網拡大や天然資源の開拓が行われ、ヤノマニ族の生活は脅かされていく。1993年には金が発掘できると知った人々が彼らのテリトリーで金発掘作業を行っていたところ、たまたまヤノマニ族が通りがかり、金発掘業者に虐殺されるという酷い事件が起きる。2012年にはブラジルの鉱山業者がヤノマニ族の住む村を襲撃し、80人が焼き殺されている。

虐殺だけでなく、現代社会と関わらずに生きていた彼らは極端に免疫力が低く、外部から持ち込まれた伝染病やウイルスで命を落とす先住民族たちは少なくない。また、メディアなどから情報が持ち込まれることも、彼らの生活習慣や考え方を変えさせることは容易に想像がつくだろう。今まで裸で暮らしていることが普通であった若者に金髪女性のポルノ写真が手渡された時、彼らは何を思ったのか。服を着て武器を持った現代人の視線に彼女たちはどんなに怯えただろう。現代のヤノマニ族の中には、伝統的な生活をしていることを恥じる若者もいるという。それでも彼らはたくましく生き、金や鉱物の発掘運動をやめるよう訴えかけている。

 

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彼らは自然と共に生き、先祖代々受け継がれてきた生活を営み続けて生きている。それを壊す権利は誰にもない。一人の写真家のおかげで、ヤノマニ族を知ることができたことに感謝している。けど、今後興味本位で観光客などが近づきませんように。彼らが助けを必要とした時だけ、救いの手が届きますように。世界にはこのような暮らしをする人たちがいるのだと認識した上で、彼らの邪魔をしないようにそっと見守り続けたいなと思った。

 

地上階と地下階にも展示されていて、ビデオや音源・ヤノマニ族の描いた絵などもあり見応えありました。5月10日まで展示やってるみたいなので、写真や少数民族に興味のある方へはおすすめ。

カルティエ財団現代美術館

住所

261 boulevard Raspail, 75014 Paris

開館時間

火曜日:11時〜22時

水曜日〜日曜日:11時〜20時

料金

大人:10.5€

25歳未満・学生:7€

13歳以下:無料

(その他詳細はHPでご確認ください)